「以前飲んだ富山の日本酒がおいしく、もう一度飲みたい」「富山の日本酒を贈りたい」とお調べ中の方に向け、この記事では富山県生まれで日本酒好きの筆者が、県民自慢の地酒をランキング形式でご紹介。
単に売れているというお酒ではなく、県内でもお酒造りに真摯に向き合っている酒造や、なかなか手に入りづらい幻の酒など、知る人ぞ知る人気銘柄をまとめました。
お酒の味だけでなく、酒造の特徴や筆者イチオシ商品、ときには裏話などを含めながら、おすすめの富山の地酒を紹介しますので、お探しの方はぜひ参考にしてください。

Furuyama
富山県生まれの日本酒好きライター。日本酒を愛飲する祖父と父の影響を受け、自然と酒のある暮らしに親しむように。好きな日本酒は辛口淡麗タイプ、好きな肴は地元の定番「昆布じめ」が一番のお気に入り。
富山の日本酒の特徴は「淡麗辛口で飲み飽きしない」

富山のお酒といえば淡麗辛口であることが有名。富山のみならず、新潟をはじめとする北陸各地では淡麗辛口の酒が多く造られています。淡麗辛口といってもスッキリしているだけでなく、米の旨みやまろやかさを感じるお酒もたくさんあり、食事をまったり楽しむのに向いているのが特徴です。

富山のお酒のいいところは「飲み飽きしないところ」。
だから、普段酒・食中酒にピッタリなんです。
北陸・富山に淡麗辛口酒が多いのは、海の幸に恵まれた食文化や、食にこだわるグルメな県民性にあるとも言われます。お寿司屋や居酒屋ではもちろんのこと、家庭でも、刺身・昆布じめ・ホタルイカといった肴と一緒にゆっくり日本酒を飲むのは定番です。
富山の日本酒がおいしいと言われる理由


富山の日本酒がおいしいと言われる理由としてまず挙げられるのは「水」です。富山各地には、立山連峰を源水とする豊富な雪解け水が伏流水となって、湧き水として湧き出ています。昭和60年の名水百選には県内から4ヶ所選定され、これは(熊本県に並び)国内最多でした。まさに富山は「名水の宝庫」であり、おいしいお酒造りに適した環境があります。



日本酒成分の約8割は「水」でできています。
もっといえば、米も水から育まれます。
水がおいしいと酒もうまくなる。
これが富山のお酒のおいしさの秘密です。
水だけでなく「米」も富山の強みで、山田錦や五百万石といった酒造好適米の生産も盛んです。立山の良水とお酒造りに適した米が原料となり、すっきりとした飲み飽きしない富山の美酒を育んでいます。
富山県おすすめ地酒・酒造マップ
こちらは、筆者が作成した富山県のおすすめ酒造マップです。





このマップに掲載している以外でも良い酒造・地酒はたくさんあるのですが、ざっくり富山全域からバランスよく厳選した形になります。
富山県の酒造分布は大きく分けると「中部(富山市)」「西部(高岡・砺波市)」「東部(魚津・黒部市)」の3エリア。それぞれのエリア・酒造によってさまざまな特徴があり、土地柄を活かした酒造りがされています。
以降では、こちらにマッピングしたおすすめ銘柄について、それぞれの魅力や酒造の特徴をご紹介していきます。
富山のおすすめ日本酒10銘柄ランキング
① 満寿泉
桝田酒造店
富山が誇る美酒。さまざまな料理と相性がよく食通の方にもおすすめ
「富山でおいしいお酒は?」と聞かれたら、まず紹介するのは「満寿泉(ますいずみ)」です。
満寿泉のHPに訪れると「美味しいものを食べている人しか美味しい酒は作れない」というモットーが出てきます。この言葉のとおり、おいしい料理を楽しみたいときの食中酒としておすすめです。品もよく味わい深いため、食通の方に贈っても喜ばれるでしょう。
また、満寿泉を造る桝田酒造店の5代目社長・桝田隆一郎氏は富山県酒造組合の理事長もされており、富山の日本酒業界を盛り上げている第一人者といっても過言ではありません。そんな酒造のお酒をまず試してみると、富山の地酒のおいしさが感じられると思います。
満寿泉はたくさんの種類を出しているのですが、まず試しに飲むなら大吟醸以上がおすすめです。
満寿泉は、次に紹介する勝駒・羽根屋に比べ手に入りやすいですし、お値段もお手頃。富山の地酒の中でもとくにおすすめの銘柄ですので、ぜひ試してみてください。
② 勝駒
清都酒造場
富山県の幻のレア酒といえば勝駒
富山で人気の日本酒といえば外せない銘柄が「勝駒(かちこま)」。「幻の酒」といわれるほどレア酒で、少量生産かつその人気から手に入りづらい日本酒です。
富山県内でも、スーパーやお土産屋さんで見かけることはほとんどなく、基本的に限られた正規取扱点でしか買えません。それだけ希少性と絶大な人気があり、富山の銘酒として知られています。



古い本ですが「うわさの名酒新200選(講談社, 2001年)」でも14種しか載っていない幻の酒の中に含まれており、レア酒としての歴史も長いです。


勝駒でもおすすめなのは純米吟醸で、淡麗辛口のキレのよさと、飲み飽きしないスッキリとした味わいを堪能できます。口に含むと、清らかな上品さも感じるのが勝駒の良さです。
入手困難で少しお値段もするレア酒ですが、もし手に入れた際にはぜひ、お刺身や寿司といった海の幸と一緒にいただくと富山を堪能できると思います。
③ 羽根屋
富美菊酒造
世界からも評価される富山の銘酒
「勝駒」に続き富山の人気銘柄として外せないのが「羽根屋(はねや)」です。
羽根屋は世界的にも評価されている日本酒ブランドで、最近では2025年ロンドンで行われたIWC(インターナショナルワインチャレンジ)SAKE部門(日本酒部門)にて金メダルを受賞。富山県が世界に誇る日本酒ブランドです。
羽根屋は、富山市にある富美菊(ふみぎく)という酒造が作っています。創業は1916年(大正5年)と100年以上続く歴史ある酒造。手間やこだわりをかけて日本酒を造っておられるため、羽根屋も少量生産となっています。
羽根屋でもとくにおすすめなのが煌火(きらび)。羽根屋の看板商品であり、香りの華やかさや、綺麗な飲みごこちが味わい深いお酒です。



煌火は公式では「夜空を彩る花火の艶やかな煌めきのよう」と紹介されているのですが、飲んでみると、まさに煌めくような華やかさ。わずかな炭酸のパチパチ感が花火を彷彿させるのもわかります。
味はメロンのような爽快なフレッシュさやジューシーさも感じられます。


高級感がありながらも食中酒として違和感なく楽しめるため、自分へのご褒美や、ハレの日を彩る贅沢な1本としてもおすすめです。
④ 成政
成政酒造
漫画「美味しんぼ」でも紹介された酒造
「成政(なりまさ)」の蔵元・成政酒造がある富山県南砺市は、全国でも有数の酒造好適米の産地。
成政のお酒は、この地でとれた五百万石・山田錦・雄山錦などの良質な酒造好適米から作られ、米の旨みを楽しめるのが特徴的です。旨味だけでなく酸味もほどよくあり、そのバランスの良さが飲み飽きしないのも魅力。



「北陸の夏酒まつり2025」で北陸3県40銘柄のうちに挙げられた、北陸の定番酒でもあります。


種類もとても多く、とくにフルーティなお酒が好きなら「大吟醸 なりまさ」は香り高くワイン感覚で楽しめておすすめです。



なんとグルメ漫画「美味しんぼ」にも登場したことがあるお酒です。
⑤ 幻の瀧
皇国晴酒造
クセがなく飲みやすいため女性にもおすすめ
「幻の瀧(まぼろしのたき)」は黒部の皇国晴酒造が造るお酒。2022年、富山県内ではじめての女性杜氏が誕生したことでも話題となりました。
そんな幻の瀧は、えぐみやクセがなく柔らかい口当たりで、女性や日本酒初心者にもおすすめ。「気軽に飲めるお酒」としても人気です。
香りは控えめで、フルーティさがほのかに漂います。品のある香りと味わいで、食中酒としてはするすると飲み続けてしまうお酒です。



「幻の瀧」はその神秘的なネーミングも良いですよね。
とくに大吟醸のパッケージはおしゃれで、お土産としてもよく置いてあります。贈答用としても人気ですね。
⑥ よしのとも
吉乃友酒造
純米酒にこだわりあり! 若者向けの甘いお酒も
吉乃友(よしのとも)酒造は、富山の中でも添加物を使わない純米酒にこだわりのある酒造です。
代表商品である「よしのとも 純」は、県民が大好きなブリやホタルイカといった肴によく合う富山らしい辛口。地元民にも愛されるお酒です。
それよりアルコール度数が少し高い「よしのとも 純米原酒」は濃醇さがあり、イタリアンやフレンチといった洋食にも相性が良いしっかりとした飲み口。
吉乃友酒造では、フルーティで女性でも飲みやすい純米大吟醸シリーズ「后(きさき)」という銘柄も人気です。こちらはアルコール度数が低い商品もあり、日本酒初心者でも試しやすいでしょう。



とくに「后(kisaki)∞ Pink 純米大吟醸」は若者や女性でも飲みやすいようにと作られた日本酒。日本酒としてもアルコール度は低めの11度で甘口です。食後酒にも向いています。
⑦ 三笑楽
三笑楽酒造
世界遺産・五箇山で造られる山の酒
「三笑楽(さんしょうらく)」は山廃仕込みが有名な日本酒で、しっかりとした旨口が特徴です。純米酒は米の旨みを感じられ、いやみもなく飲み飽きしないため普段酒にも適しています。
三笑楽酒造は「富山県おすすめ酒造マップ」を見ていただくとわかるとおり、山のほうにあります。ここは岐阜県との県境にある世界遺産・五箇山に位置するエリアです。



合掌造りの集落で有名なところですね。
生貯蔵酒なんかは筆者も飲みますが、口当たり柔らかく、冷酒で飲むととてもおいしいです。


豪雪地帯の山間酒造ということもあってか旨口の酒が山の幸とよくあうため、とくに秋になると飲みたくなるようなお酒。お野菜や山菜の天ぷら、きのこ料理、焼き鳥なんかとあわせると相性抜群です。
⑧ 銀盤
銀盤酒造
名水百選・黒部の水を使ったすっきりとした地酒
「銀盤(ぎんばん)」は全国的にも有名な大手酒造「銀盤酒造」の代表酒。さらりとした軽い飲み口でいくらでも飲めてしまい、後口もすっきりとしているのが特徴的です。
ロングセラーの「銀盤 純米大吟醸 播州50」は富山らしい淡麗辛口なお酒で食中酒におすすめ。
銀盤酒造の場所は、昭和60年「名水百選」のひとつである黒部川扇状地湧水群のそばにあり、その豊富な良水を仕込み水としています。
▼ 銀盤酒造
▼ 黒部川扇状地湧水群
銀盤酒造のお酒は「銀盤」以外にもおすすめがあり、純米大吟醸の「米の芯」がおいしいです。
「米の芯」はなんと精米歩合35%。まさに米の芯まで磨いた純米大吟醸で、その味わいや香りは単なるフルーツ感を超えて、白桃やライチのような芳醇さがあります。高級感があるブランデーのようなボトルでお土産としてもよく選ばれるお酒です。
⑨ 太刀山
吉江酒造
※現在品薄で手に入れづらいです。
親子2人・手作りで造られる個性的なお酒
「太刀山(たちやま)」を製造している吉江酒造は、なんと親子2人で完全に手作りでお酒を製造されています。
それだけに杜氏の方の思いや人柄を感じられるお酒となっており、個性的な味が特徴的。ファンもつく富山の地酒です。
そんな吉江酒造ですが2025年4月に火災に見舞われ、工場と倉庫が全焼し、これにより太刀山の製品化・出荷等が難しくなりました。しかし、県酒造組合などの助けもあり、現在は再起を図っています。



そのため品薄も続いていますが、地元民やファンからは復旧が願われており、頑張っている酒造です。
⑩ 苗加屋
若鶴酒造
富山の地酒お土産ギフトの定番。ウイスキーも有名
最後にぜひ紹介したいと考えたのが「苗加屋(のうかや)」です。全国新酒鑑評会で金賞受賞経歴も豊富な若鶴酒造(砺波市)が作っています。この酒造は北陸で唯一ウイスキーも作っており、三郎丸蒸留所のウイスキー、スモーキーハイボールなども有名です。
若鶴酒造は直営店(とやま地酒本舗 蔵の香)を富山駅のお土産フロアにかまえていることもあり、苗加屋や三郎丸のウイスキーをお土産に買って行かれる方も。また、箱や瓶のパッケージもおしゃれで、贈答用・ギフトとして贈りやすさもあります。



私も「苗加屋」を地酒のお土産として購入したことがあります。
その際は直営店の店員さんにオススメを聞き、「苗加屋 純米大吟醸 雄山錦」を贈りました(山田錦もあります)。その際店員さんに教えてもらったのですが、男性には雄山錦、女性には山田錦が人気だそうです。
富山の地酒をぜひ飲んでみられ!
富山の日本酒は食中酒としてピッタリですので、自分のための普段酒としても最高ですし、贈り物としても喜ばれると思います。



とくに富山らしい淡麗辛口酒は、寿司や刺身といった海鮮はもちろん、焼き鳥や串カツ、おでんといったありふれた肴ともよく合います。
普段酒として、毎日気楽に飲みたいという方には「満寿泉」「幻の瀧」あたりが良いでしょう。
手に入りづらいですが、特別な日の贅沢なお酒には「勝駒」「羽根屋」がぴったりです。
最近は日本酒初心者の若者や女性でも飲みやすいようなお酒造りをされている「吉乃友」なんかもイチオシ。
ぜひ、富山以外にお住まいの方にも、富山のおいしい地酒をまったり堪能していただければ嬉しいです。